日本病院会正副会長|2022年頭所感

一般社団法人日本病院会

DXにおいて注意すべきこと

 あけましておめでとうございます。
 2020年から始まったコロナ禍において、新型コロナウイルス接触確認アプリのCOCOAの不具合やHER―SYS、G―MIS、V―SYSなどの統合化されていない使い勝手の悪さなど、日本の医療情報のシステム化の遅れが目立ちました。
 これを受け2021年秋にデジタル庁が創設されたもののいまだ存在感は薄いと言わざるを得ません。一方で医療界においては、昨年10月からオンライン資格確認システムが運用開始されました。
 まだ病院における稼働率は低いものの、今後特定健診や癌検診などの健診データ、2023年からは電子処方箋などがこのシステムを活用して運営されます。これは医療情報連携基盤といい、国内最大の医療情報プラットフォームとなる予定です。
 近い将来、このプラットフォームを経由して患者さんのPHR(個人医療情報)を取得し、診療にあたるようになるでしょう。好むと好まざるにかかわらず病院のDXは始まったのです。
 今後急速に展開する病院のDXにおいては注意すべき点が二つあります。一つ目は、DXは目的ではなく手段であることの確認です。それぞれの部門で単一目的で導入するときも、病院全体として統合化されたコンセプトを持つべきです。基本になるのは、医療と経営の質の向上でしょう。それらの視点が欠けると無駄な出費に終わりかねません。
 二つ目は、サイバーセキュリティへの対策です。昨年も複数の病院がランサムウェア(データを人質に取り金銭を要求するウイルス)によるアタックで病院機能が麻痺したケースがありました。
 日病による緊急アンケート調査では、病院の医療情報システムは外部とつながっていないという誤った思い込みが多くを占めていました。
 しかし、地域医療連携だけでなく、医療機器や電子カルテのリモートメンテナンスからのウイルスの侵入も考えられます。完全に安全なシステムは存在しないと考えるべきでしょう。
 日本病院会では今後も病院のDXに関する情報を発信していきます。本年もよろしくお願いいたします。

大道道大
一般社団法人 日本病院会 副会長 大道道大


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